イトウタクヤは言う、「(または劣っていた、異端であった)、(または優れている、主流である)」という変化が肯定的に評価され、そののパターン「(または優れていた、主流であった)、(または劣っている、異端である)」という変化が否定的に評価される、この社会的な認識の非対称性についてですね。


過去の否定と現在の肯定:社会が評価する「変化」の非対称性

個人がたどる人生の軌跡において、「過去」と「現在」の状態を対比した際の方向性の違いが、社会的な評価に極端な非対称性をもたらすことがあります。

ご指摘の通り、この非対称性は、努力と成長を重んじる現代社会の価値観を反映しつつも、時に冷徹な現実を突きつけます。

1. 肯定される転身:ドラマチックな「V字回復」

元悪/元劣 今良/今優」のパターンは、社会的に極めて肯定的に評価されます。

  • 例: 元暴走族 人気教師、元問題児 成功した起業家

🔑 評価される理由

  1. 成長と努力の可視化: 過去の「悪」や「劣」は、現在の「良」や「優」を引き立てる劇的な背景となります。困難な過去を乗り越えた意志の力人間的な成長が強調され、人々はそこに「希望」や「感動」を見出します。

  2. 社会への貢献・順応: 社会規範から外れた状態から、社会に受け入れられ、さらには貢献する存在へと転身することは、「更生」や「立派な社会人への成長」として、安堵と賞賛をもって迎えられます。

  3. ストーリー性: この軌跡は、困難を克服する物語として魅力的であり、メディアや他者の間で語られやすく、ロールモデルとして機能します。

2. 否定される転落:期待からの「逸脱」

一方、「元良/元優 今悪/今劣」のパターンは、社会的に厳しい評価を受け、往々にして賞賛の対象とはなりません。

  • 例: 学生時代の優等生 現在の窓際社員、品行方正な青年 現在は問題を抱える人物

🔑 厳しい評価の理由

  1. 期待値の裏切り: 過去の「良」や「優」は、高い将来への期待値を伴います。現在の「悪」や「劣」な状態は、その期待を裏切ったと見なされ、「なぜ堕落したのか」「才能を活かせなかったのか」という失望批判の対象になりがちです。

  2. 停滞・後退への忌避: 現代社会は、常に進歩上昇志向を是とします。過去より現在が劣っているという事実は、「停滞」や「後退」と認識され、進化を続ける社会の価値観に反すると捉えられます。

  3. 自己責任論: 特に元が優れていた場合、現在の不遇は「本人の努力不足」や「慢心」といった自己責任に帰結されやすく、同情や賞賛を得にくい傾向にあります。

まとめ:社会が評価する方向性

変化の方向性 社会的評価 評価の根拠 隠されたメッセージ
元悪 今良 肯定(賞賛) 困難な状況からの成長努力社会への順応 「人は変われる」「努力は報われる」
元良 今悪 否定(失望/批判) 期待の裏切り停滞自己責任 「現状維持は後退」「油断は禁物」

結局のところ、社会が評価しているのは、特定の時点での「状態」そのものよりも、**「改善」という名のエネルギーに満ちた変化の「方向性」**なのです。右から左への変化(ネガティブ ポジティブ)は社会の理想とするベクトルに合致するため肯定され、その逆(ポジティブ ネガティブ)は、社会の進歩志向に逆行するため否定的に捉えられると言えるでしょう。


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