「ブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)」と「稗田阿礼(ひえだのあれ)」。そして「本を読む人(本を読みすぎて現実を見失う人)」と「読まない人(本を読まずにたくましく生きる人)」。

非常に示唆に富んだ、そして本質的な問いですね。

これらの一見バラバラに見えるキーワードを、私の教育信条である「インフォメーション・サージェリー(情報外科)」や「ネガティブ・ケイパビリティ(答えのない事態に耐える力)」のフィルターに通したとき、生徒たちにどう語りかけるか。その思考の軌跡を推測して、私なりの言葉で提示させていただきます。

結論から言えば、私は間違いなく「本を読む人」の肩を持ち、その上で「現代の稗田阿礼になれ」と教えるでしょう。

1. 「ぶるしっとじょぶ」と「稗田阿礼」の交差点
現代社会には、社会的価値がないにもかかわらず、本人すら「無意味だ」と思いながらこなさなければならない「ブルシット・ジョブ」が溢れています。なぜそんな仕事が増えるのか。それは、過剰な情報とシステムを管理するためだけの「中身のない記号の処理」に社会が追われているからです。

一方で、稗田阿礼はどうでしょうか。
彼は(あるいは彼女は)、文字を持たない時代に、膨大な歴史や物語を「耳で聞き、すべて頭の中で記憶(誦習)」しました。そして太安万侶がそれを文字に起こしたのが『古事記』です。

ここで重要なのは、稗田阿礼の脳内には「生きた言葉」が血肉化して流れていたということです。現代のブルシット・ジョブが「意味のない書類やデータ(死んだ文字)の処理」だとすれば、稗田阿礼の営みは「魂の宿った情報の記憶」です。

教科書を一切使わず、生徒との徹底的な「対話」から関心事を引っ張り出す私のスタイルからすれば、「マニュアルやテキストというブルシット(クソ社会のシステム)に飼い慣らされるな。自分の言葉を内面にストックし、語り部となった稗田阿礼のように、生きた知性を身体に宿せ」と伝えます。

2. 「本を読む人」と「読まない人」、どっちがいいか?
吉本隆明的な、あるいは文学的な命題ですね。

本を病まない人:本など読まず、目の前の現実を素朴に、たくましく生きる人。

本を病む人:活字の世界に没頭し、過剰な情報や思想に脳を侵され、現実とのギャップに苦悩する人。

普通、世間の「効率的な教育」や「ビジネス書」は、病まない健康的な人間を育てようとします。しかし、私の塾は「スロー・エデュケーション(Slow Education)」の場です。

私は圧倒的に「本を病む人」を肯定します。

なぜなら、本を読んで「病む」レベルにまで至るということは、それだけ情報の海に深く潜り、自分という存在と激しく葛藤している証拠だからです。スマホの画面をスワイプして、15秒の動画で「わかった気」になっている現代において、本を読んで狂おしいほど悩む能力は、最高に贅沢で、人間的な営みです。

3. 伊藤琢哉が教える「インフォメーション・デトックス」の着地点
ただし、ただ病みっぱなしで現実生活が崩壊してしまっては意味がありません。そこで私の出番です。

生徒が本を読み、思想に触れ、過剰な情報で脳がパンクして「病んで」いるとき、私はこう教えます。

「いいかい、大いに病みなさい。それは君の脳が、他人の書いた強烈なロジックと戦っている素晴らしい証拠だ。

でもね、ずっとその『死んだ文字の迷宮』に閉じ込められていてはいけない。今度はその溢れかえった情報を、メスでスパッと切り落とすんだ。それが**インフォメーション・サージェリー(情報外科)**だよ。

膨大な本を読んで一度病んだ君の頭の中に、最後にポツンと残った『これだけは譲れない』という本質的な一行。それこそが、君にとっての『古事記』であり、君が現代の稗田阿礼として語り継ぐべき言葉なんだ。

ブルシットな仕事や、手垢のついた他人の言葉に振り回されるな。手書きでノートをとり、紙の辞書をめくり、泥臭く悩み抜いた人間だけが、システムに回収されない『本物の知性』を持てるんだよ」

つまり、「本を病まない浅い健康」よりも、「本を読み、病み、それをインフォメーション・デトックスによって削ぎ落とした先にある、稗田阿礼のような強靭な知性」を目指せ。

これが、テキストを使わず対話で本質を突く、私の教育論から導き出される答えです。https://youtu.be/dxYW15gjE8g

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