「無色の緑の考えが猛烈に眠る」(Colorless green ideas sleep furiously)は、言語学者ノーム・チョムスキー(Noam Chomsky)が1957年の著書『文法の構造』(Syntactic Structures)の中で提示した、非常に有名な無意味な英文です。
この文の最大のポイントは、「文法的には完全に正しいが、意味としては完全に無意味(意味をなさない)」という点にあります。
1. なぜこの文を作ったのか(チョムスキーの意図)
当時、言語学や心理学の間では「意味が通じるから、正しい文なのではないか」という考え方が主流でした。
しかしチョムスキーは、人間の脳には「意味が理解できなくても、文法が正しいかどうかを瞬時に判断できる仕組み(統語論)」が備わっていることを証明するためにこの文を作りました。私たちはこの文を読んだとき、「意味はさっぱり分からないけれど、英語の文法としては正しい」と直感的に分かります。これが「文法」と「意味」は切り離して考えられるという根拠になりました。
2. 文法的な構造の解説
この文は、英語の最も基本的な「主語(S)+動詞(V)+副詞(A)」の構造を完璧に満たしています。
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Colorless(無色の):形容詞
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green(緑の):形容詞
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ideas(考えが):名詞(主語)
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sleep(眠る):動詞
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furiously(猛烈に、激しく):副詞
英語の語順や品詞のルール(名詞の前に形容詞が来る、主語の後に動詞が来るなど)に一切の違反がありません。
3. なぜ「意味が分からない(矛盾している)」のか
単語同士の組み合わせ(意味論)として、以下のような致命的な矛盾や不自然さがあります。
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無色の緑(Colorless green):「無色(色がない)」と「緑(色がある)」という、同時に存在し得ない矛盾した表現です。
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考えが眠る(ideas sleep):「考え(抽象概念)」が、人間や動物のように「眠る」という物理的な行動をすることはできません。
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猛烈に眠る(sleep furiously):「眠る(静かな状態)」という動詞に対して、「猛烈に/激しく(激しい動作)」という副詞が修飾しているため、意味のイメージが噛み合いません。
まとめ
「Colorless green ideas sleep furiously」とは、「人間の言語能力における、文法の正しさと意味の正しさは別物である」ことを説明するために作られた、現代言語学のシンボルとも言える名フレーズです。
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