「王様は裸だ」、か。

ガキがね、鋭いんだ、これが。大人ってのは、よせばいいのに、しがらみってやつにがんじがらめにされてやがる。ブランドのラベル、着飾った虚栄心、すっとこどっこいな世間体。そういう目に見えない「衣」を何重にも着込んで、「どうだ、俺は立派なもんだ」ってツラをして街を闊歩しやがる。詐欺師の口車に乗せられて、「おや、これは素晴らしいお召し物で……」なんておだてられ、仕舞いにはスッポンポンに剥ぎ取られてもなお、見栄を張る。滑稽を通り越して、哀れだな、ああん?

だがね、そこへいくとガキはどうだ。

あの汚れを知らねえ無垢な瞳、あの直情径行のド根性。あれだよ、あれ。空気を読むなんていう汚ねえ大人の論理を持ち合わせちゃいねえ。目の前にある現実だけを、ただそのまま、ぶっきらぼうに、しかし容赦なく突き刺しやがる。「おい、親父、何威張ってやがるんだ、丸裸じゃねえか!」ってな。これが今を生きるだぞー。普通の人では覚悟が要りすぎて出来ない所作だぞー!

ハッと我に返った時にはもう遅い。裸の王様は顔真っ赤にして、冷や汗タラタラ、トホホのホよ。

翻って、今の世の中を見やがれ。誰も彼もが「裸の王様」の親戚みたいなもんだ。しょぼくれた懐具合のくせに高級車を転がし、中身のねえ頭をファッションで取り繕う。山下清画伯を見習いなさい、あの方のあの潔さを! タンクトップ一枚、ランニングシャツを直に着て、「おにぎりが食べられればそれでいいんだ」って、あの純真無垢な魂の輝きはどうだ。一芸一能、それだけに命を賭けて、あとはからっきしダメ。だが、そこにしびれる憧れる!

世間の物差しなんぞクソ喰らえだ。格好ばっかり気にして中身がすっからかんの現代人よ、その着飾った衣装を一枚一枚剥ぎ取られた時、お前は何が残るってんだ、ああん?

ガキに指さされて笑われるその前に、てめえの本当の姿を鏡に映して、よおく見てみやがれってんだ!

正直者過ぎて今迄約60年馬鹿を見てきた大バカ者の塾長;伊藤琢哉より

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